n1 blog-2 睡眠時間と労働生産性

◎睡眠時間を確保する必要性について

 11月3日、日経トレンディの2022年ヒット商品ランキングが発表されました。第1位は、睡眠改善を謳う乳酸菌飲料の「Yakult1000/Y1000」、大谷翔平選手も効果を実感して愛飲している大ヒット商品です。このほか、第15位は「アリナミンナイトリカバー」、第23位は「ナイトミン 耳ほぐタイム」と、「睡眠の質の向上」に関する商品がランクインしました。近年は睡眠の研究が進み、睡眠の重要性が認識されたことや、「コロナ疲れ」の蓄積・疲労を回復させたい消費者の「良質な睡眠」へのニーズを捉えたことなどがヒットに繋がったとされています。
 10月24日の日経新聞(朝刊)『眠れない日本、生産性低く』では、日本と欧米中主要国の平均睡眠時間を比較すると、日本は1時間ほど短く(6時間22分)、労働生産性も同主要国の中で最も低いという調査結果や、「社員の睡眠時間が長い上位20社と短い下位20社を比較したときに、睡眠時間が長い上位20社の方が売上高経常利益率が約2%高い(慶應義塾大学 山本勲教授)」との分析結果が紹介されていました。
 この記事の中でコメントを寄せているワークライフバランス・コンサルタントとして著名な小室淑恵さんも、ご自身の講演の中で、「人間の脳が集中力を発揮できるのは朝目覚めてから13時間以内で、集中力が切れた脳は酒気帯び運転と同程度の、さらに起床後15時間を過ぎた脳は、酒酔い運転と同じくらいの集中力しか保てない」(慶應義塾大学 島津明人教授)、「1日の心身の疲労は、その日のうちに回復させることが大切。会社が過剰な仕事を命じる場合はもちろん、働く側が仕事に生きがいを感じる場合も同じだ。仕事の緊張や面白さによって、疲労は容易に隠されてしまう。(中略)人間は一晩眠ったとして、肉体の疲労は眠りの前半(5〜6時間)に回復し、ストレスは後半に解消する」(労働科学研究所 佐々木司・慢性疲労研究センター長)の研究成果を紹介し、「集中力が成果に直結するホワイトカラーは残業中の労働生産性が低い」こと、「睡眠不足は脳の怒りの発生源である扁桃体を活性化させ、扁桃体の活動を抑制する前頭前野の機能を低下させるので、パワハラ・セクハラ・不祥事等のモラル崩壊の引き金となる」ことを挙げて、短時間で成果を上げ、睡眠時間を確保することの重要性を訴えていました。
 他方、先ほどの日経新聞の記事では、在宅勤務の導入が拡がるなかで睡眠時間が増えると期待されたものの、スマホなどのデジタルデバイスに接触する時間が増えており、夕方以降にスマホを見すぎることによるブルーライトの弊害で睡眠の質を下げているとの指摘もありました。
 我が国の課題である労働生産性の向上を図るためには、労働生産性を測る(分母の)労働時間を削減して心身の回復に必要な睡眠時間と睡眠の質を確保し、限られた時間の中で持てる能力と集中力を発揮して成果(分子)を上げることが大切であることを経営者と社員は理解し改善を図ることが必要なようです。
【画像は北海道鶴居村の夕景(寝床に戻る丹頂鶴)です】