雇用関係助成金のDX化に関する内容とスケジュール
8月27日、第197回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会が開催され、雇用関係助成金のDX化に関する内容とスケジュールが示されました。
事業主からの雇用保険料を財源として実施している事業主向けの雇用関係助成金(年間約40万件の支給決定。13種類50コース(2024年6月時点))の手続きについては、令和5年度から「雇用関係助成金ポータル」の運用を開始し、オンラインでの支給申請を可能にしました。
しかしながら、申請項目や添付書類が多岐にわたっている上、添付書類の中でもマイナンバー情報連携の対象外である賃金台帳、出勤簿、労働条件通知書等は、事業所によって、作成・管理方法が異なっており、現状、PDFや紙での添付が多数を占めています。このため、電子申請された場合であっても、職員が紙でプリントアウトするなどして目視で確認している状況であり、審査期間も概ね3ヶ月とスピーディーな支給につながっていません。また、申請内容等の情報についても十分にデータ化されておらず、EBPMや審査等の業務効率化を推進する観点からも望ましいものとは言い難い状況です。
こうした課題を解決するために、関係局長をメンバーとする「雇用関係助成金のDX化検討チーム」を令和5年12月に立ち上げました。
令和6年秋以降、助成金が政策目的を実現するツールとして有効に機能しているか等について効果検証の取組みを強化するのに併せて、すべての雇用関係助成金について業務プロセスの見直しを行い、令和7年度以降順次実施すべく支給要領の改正や様式の標準化等の作業を進めるとしています。
雇用関係助成金のDXの方向性(1)
1 既存の業務プロセスの見直し(申請項目や添付書類の見直し)
〈主な見直し内容〉
(1)重複して申請させている申請項目や添付書類を削減
(2)既に行政が把握している情報(雇用保険データ)で確認できる申請項目や添付書類を削除
(3)支給要件確認や審査等において必要性の少ない項目を削除
(4)客観的に確認が難しい要件の廃止
(5)(一部の助成金において)計画書等の廃止 等
⇨全助成金平均で、申請項目数は約3割、添付書類は約2割それぞれ削減(現時点)
(令和7年度以降順次実施すべく、今後、支給要領の改正や様式の標準化等の作業を進める)
雇用関係助成金のDXの方向性(2)
2 不正受給対策の強化(支給前の調査確認の強化等)
〈主な見直し内容〉
(1)書面審査を中心に行なっている審査業務について、事実確認のための能動的な調査確認を強化
(一部試行等を経た上で令和7年度から実施)
(2)調査に非協力的な場合や事実の立証が十分にできない場合に不支給決定とする規定や、地方労働局が調査のために従業員へのヒアリングや関係機関に対して照会を行う場合、事業主がこれに応じることを支給要件とする規定の導入等について検討
3 申請手続の負担軽減及び審査の効率化
〈主な見直し内容〉
(1)ハローワークが保持している雇用保険関係情報について、助成金申請時の再入力を省略する。
(システム改修の上、令和7年度中の運用開始を目指す)
(2)デジタル庁の協力を得て、jGrantsの検索機能に雇用関係助成金を追加し、jGrants内及び「雇用関係助成金ポータル」内に双方のリンクを貼る等、申請者の利便性の向上を図る取組の調整を進める。
雇用関係助成金のDXの方向性(2)
4 添付書類(賃金台帳、出勤簿、労働条件通知書、領収書等)のデジタル化
〈主な見直し内容〉
(1)AI等のデジタル化技術の活用
紙をPDF化したデータ等からテキスト情報をデータ化する技術も進展。事業主から提出されたアナログデータをデジタルデータとして処理できないか、引き続き他の手段と併せて実装可能性について検討。
(2)「雇用関係助成金ポータル」と民間人事労務管理ソフトウエア等のAPI連携
企業が利用している民間ソフトウエア等と「雇用関係助成金ポータル」とのAPI連携の方策について、他のデジタル化技術と併せて実現性と効果を検討(民間ソフトウエア会社の開発インセンティブが高まるような視点にも留意)。
(3)添付書類様式の統一と利用促進
デジタルで人事労務管理を行なっていない中小・零細企業に関しても可能な限りデジタル化を進める。
具体的には、①厚生労働省が示す標準様式(電子)を作成した上で、当該様式を活用した添付書類の作成を推奨しつつも、依然として紙による管理を行う事業主については、AI-OCRによる読み取り精度を高めるため、厚生労働省が示す標準書式を活用した添付書類の作成を推奨する方法や、②AIを活用した標準データ化の方法等について検討。
(4)電子申請の義務化の検討
一定の規模の企業に対し助成金手続における電子申請の義務化を検討
申請情報等のデジタル化を進め、将来的には、助成金審査業務の自動化、要調査対象事案の抽出など不正受給対策のブラッシュアップのほか、一層のEBPMの強化といったデジタルデータの活用を目指す。
「雇用関係助成金のDX化について(報告)」は、こちらからご確認ください。
【画像は、3年に一度、世界のトップダンサーが東京に集い開催される「世界バレエフェスティバル2024」の会場風景です(東京文化会館)】