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10月25日、厚生労働省は、「労働者性に疑義がある方の労働基準法等違反相談窓口」を全国の労働基準監督署に設置することを公表しました。
近年、働き方が多様化し、フリーランスとしての新しい働き方が拡大する一方で、フリーランスとして働く方の中には、実態として労働基準法上の労働者に該当するような働き方をしているにもかかわらず、名目上は自営業者として扱われ、労働基準法等に基づく保護が受けられないといった問題が指摘されています。
このため、厚生労働省では、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(令和5年法律第25号)が施行される11月1日に合わせて、「労働者性に疑義がある方の労働基準法等違反相談窓口」を設置します。
「労働者性に疑義がある方の労働基準法等違反相談窓口」の概要
🔴設置場所:全国の労働基準監督署
🔴受付時間:8時30分〜17時15分(平日のみ)
🔴取り組みの概要:
・請負契約や委任契約といった契約形式にとらわれることなく、働く方々からの相談に丁寧に対応します。
・労働者に該当するどうかの判断基準の説明や、「働き方の自己診断チェックリスト」を用いたチェックなどを行います。
・労働者性の判断基準について理解を促すため、新たに労働者性判断に係る最近の代表的な裁判例を取りまとめた「労働基準法における労働者性に係る参考資料集」を作成しました。
・これらの資料も活用しつつ、相談内容から労働基準法等違反が疑われ、申告(=労働基準法等に基づき、法違反の事実を労働基準監督署に申し立てることをいいます。)として調査した場合には、原則、相談者の方が労働者に当たるかどうかの判断を行います。
労働者とは
🔵労働基準法では、「労働者」を「事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう」(第9条)と規定しています。
🔵実務上、「労働者」に当たるかどうかは、以下の2つの基準(使用従属性)で判断されます。
①労働が他人の指揮監督下において行われているかどうか、すなわち、他人に従属して労務を提供しているかどうか
②報酬が、「指揮監督下における労働」の対価として支払われているかどうか
具体的には、「労働者性の判断基準」に基づき、実態をもとに総合的に判断されます。
労働者性の判断基準
1. 「使用従属性」に関する判断基準
(1)「指揮監督下の労働」であること
ア 仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無
イ 業務遂行上の指揮監督の有無
ウ 拘束性の有無
エ 代替性の有無(指揮監督関係を補強する要素)
(2)「報酬の労務対償性」があること
2. 「労働者性」の判断を補強する要素
(1)事業者性の有無
(2)専属性の程度
(3)その他
「働き方の自己診断チェックリスト」のチェックポイント
上記の「労働者性の判断基準」に基づき、チェックポイントは次の8つです。
1 依頼に対する諾否:「委託業者から仕事を頼まれたら、断る自由はありますか」
2 指揮監督:「日々の仕事の内容や方法はどのように決めていますか」
3 拘束性:「委託事業者から仕事の就業場所や就業時間(始業・終業)を決められていますか」
4 代替性:「あなたの都合が悪くなった場合、頼まれた仕事を代わりの人に行わせることはできますか」
5 報酬の労務対償性:「あなたの報酬はどのように決められていますか」
6 資機材等の負担:「仕事で使う材料又は機械・器具等は誰が用意していますか」
7 報酬の額:「同種の仕事に従事する正規従業員と比較した場合、報酬の額はどうですか」
8 専属性:「他の仕事に従事することは可能ですか」
「労働基準法における労働者性判断に係る参考資料集」
労働基準法第9条の「労働者」に該当するかどうかについては、請負契約や委任契約といった契約の形式や名称にかかわらず、個々の働き方の実態に基づいて判断されます。
本資料集作成の目的は、労働基準法における労働者性の判断基準に関し、基本的な考え方を説明するとともに、最近の代表的な裁判例において判断に用いられた事情を示すことで、労働関係の当事者にどのように労働者性の判断がされるかについて理解を促すことです。
本資料の使用に当たっては、次の点に留意してください。
・労働者性は、複数の要素(「労働者性の判断基準」)を踏まえて総合的に判断されますが、当該判断に当たっては、まず当該要素の種類を把握するとともに、それが重要な要素であるのか、補強的な要素であるのかといった軽重を理解することが重要です。
⇨本資料集「第1 労働基準法研究会報告(労働基準法の「労働者」の判断基準について)の概要」に掲載
・上記の要素に該当するかどうかの判断に資するよう、本資料集においては、要素ごとに簡潔に考え方を示すとともに、直近10年間(平成24年以降)の主要な裁判例において判断に用いられた事情の例を引用したものです。
⇨本資料集「第2 個別の判断要素について」に掲載
・上記の裁判例について、事件名、判決年月日・裁判例集掲載号頁、職種、労働者性肯定/否定の別等の情報を一覧にしたため、必要に応じて参照して下さい。
⇨本資料集「別紙1 裁判例一覧」に掲載
・上記の裁判例における労働者性の各判断要素に係る判示も抜粋して掲載したため、必要に応じて参照して下さい。
⇨本資料集「別紙2 裁判例判示抜粋」に掲載
・一定の職種等については別途解釈例規が示されているところ、当該解釈例規を一覧にしたため、必要に応じて参照して下さい。
⇨本資料集「別紙3 関連通達」に掲載
「労働基準法における労働者性判断に係る 参考資料集」は、こちらからご確認ください。
繰り返しになりますが、労働基準法第9条の「労働者」に該当するかどうかについては、請負契約や委任契約といった契約の形式や名称にかかわらず、個々の働き方の実態に基づいて判断されます。
裁判例に見られますように、労働者性が肯定されますと、発注事業者に「時間外手当(割増賃金)」、「社会保険料」、「退職金」などの支払いが発生したり、取引の解消が「解雇」の問題などに発展する恐れがあります。
フリーランスの方だけでなく、フリーランスに業務を委託している発注事業者も、上記のチェックリストや資料集を活用して、フリーランス等との取引の実態を点検することが大切です。
【画像は、10月に新宿・紀伊國屋ホールで上演された「灯に佇む」(加藤健一事務所)の会場に飾られた、加藤憲一事務所がこれまで上演した公演のチラシです。】
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