令和7年度 労働・社会保険関係法令の主な改正点①

 令和7年度の労務・社会保険関係法令においては、改正育児・介護休業法及び改正雇用保険法の段階的な施行をはじめ、さまざまな制度改正が予定されています。令和7年4月施行への対応は既に修了されていと思いますが、主な改正点を整理していますので、改めてご確認ください。

令和7年4月施行

▪️子の看護休暇の見直し(名称「子の看護等休暇」とする)
・対象となる子の範囲:「小学校修学の始期に達するまで」⇨「小学校第3学年修了まで」に拡大
・取得理由:「感染症に伴う学級閉鎖や入園(入学)式、卒園式」を追加
・労使協定により除外できる労働者から「継続雇用期間6ヵ月未満」を撤廃
▪️所定外労働の制限
・請求が可能となる労働者の範囲:「3歳未満の子を養育する労働者」⇨「小学校修学前の子を養育する労働者」に拡大
▪️育児休業等の取得状況公表義務の適用拡大
・「常時雇用する労働者数1,001人以上」⇨「同301人以上」に拡大
▪️育児・介護のためのテレワーク(努力義務)
・3歳に満たない子を養育する労働者、または要介護状態にある対象家族を介護する労働者がテレワーク等を選択できるように措置を講ずることが事業主の努力義務とされる
▪️短時間勤務制度の代替措置の選択肢拡大
・3歳に満たない子を養育する労働者に、育児短時間勤務制度を講ずることが困難な場合の代替措置の選択肢の1つにテレワークを追加
▪️介護離職を防止するための個別の周知・意向確認
・家族の介護の必要性に直面した旨の申出をした労働者に対し、事業主が介護両立支援制度等に関する情報(制度の内容)を個別に周知し、当該労働者の制度利用に関する意向を確認することを義務付ける
(1)周知事項 ①介護両立支援制度等(制度の内容) 介護両立支援制度等の申出先(例:人事部など) ③介護休業給付金に関すること
(2)方法   ①面談 ②書面交付 ③FAX ④電子メール等 のいずれか
▪️介護に直面する前の早い段階(40歳等)での両立支援制度等に関する情報提供
・「労働者が40に達する日の属する年度」または「労働者が40歳に達した日の翌日から1年間」のいずれかにおいて、労働者に対し介護両立支援制度等に関する情報提供を行うことを事業主に義務付ける。周知事項、情報提供の方法は、上記と同じ。
(1)情報提供することが望まれる内容
・介護休業制度は、介護の体制を構築するため一定期間休業する場合に対応するもの
・介護休暇制度は、介護保険の手続きや「常時介護を必要とする状態」にある対象家族の通院の付き添いなど、日常的な介護のニーズにスポット的に対応するためのもの
・所定労働時間の短縮等の措置その他の仕事と介護の両立のための柔軟な働き方に関する制度は、日常的な介護のニーズに定期的に対応するためのもの
▪️介護離職防止のための雇用環境整備
・介護両立支援制度等の申出が円滑に行われるようにするため、事業主は次の①〜④のいずれかの雇用環境整備の措置を講じなければならない
①介護両立支援制度等に関する研修の実施
②介護両立支援制度等に関する相談体制の整備(相談窓口設置)
③自社の労働者の介護両立支援制度等の利用の事例の収集・提供
④自社の労働者への両立支援制度等の利用促進に関する方針の周知
*雇用環境整備の措置としては、4つのうちいずれか1つを講じれば義務を履行したことになるものの、その実効性を高めるため、複数の措置を講じることが望ましい。
*対象となる家族には、直系の祖父母や配偶者の父母、子、孫などを含む。
▪️介護休暇を取得できる労働者の要件緩和
・労使協定により除外できる労働者から「継続雇用期間6ヵ月未満」を撤廃
▪️介護のためのテレワーク導入
・「常時介護を必要とする状態」にある対象家族を介護する労働者が「テレワーク」を選択できるよう措置を講ずることを事業主の努力義務とすること
▪️「常時介護を必要とする状態に関する判断基準」の見直し
・厚生労働省が定める「常時介護を必要とする状態に関する判断基準」に当てはまれば、介護両立支援支援制度等を利用することができる。
     「常時介護を必要とする状態に関する判断基準」は、こちらからご確認ください。
 *その他介護両立支援制度等に関する注意が必要なポイント
 ・「対象家族には、配偶者、父母、子、祖父母、兄弟姉妹、孫、配偶者の父母が含まれ、同居の有無を問わないものであること
 ・介護両立支援制度等は、高齢者のみならず、障害児・者や医療的ケア児・者を介護・支援する場合であっても判断基準に該当すれば利用できるものであること
 ・判断基準は最低基準であり、各事業主における独自の取組として、労働者にとってより緩やかな内容の制度とすることは望ましいものであること
 ・期間を定めて雇用される労働者であっても、一定の要件を満たせば、介護両立支援制度等を取得できること

雇用保険関係

▪️雇用保険料率の見直し
・法律上の育児休業等給付に係る料率(育児休業給付費充当徴収保険率)を1000分の5に引き上げる一方で、令和5年度の財政状況等を踏まえた変更(弾力条項)として1000分の4とする
▪️高年齢雇用継続給付の支給率の変更
・支給率を最大15%から10%に変更
▪️出生後休業支援給付金の創設
・2歳未満の子を養育する被保険者が育児のために時短就業をした場合に、時短就業中に支払われた賃金の最大10%を支給する給付金を創設
▪️育児休業給付金の延長申請の要件厳格化
・育児休業給付の支給対象となる育児休業の延長(1歳以降)について、保健所等に入れなかったことを理由とする延長事由の要件を厳格化。速やかな職場復帰を図るために保育所等における保育の利用を希望しているものであると公共職業安定所長が認める場合に限るものとする
▪️出生児育児休業給付金の支給申請期間見直し
・出生児育児休業給付金の対象となる出生児育児休業(産後パパ育休)が、子の出生日等から8週間を経過するまでに修了した場合(28取得または2回目が修了)に、休業を修了した日の翌日から申請可能とする

高年齢雇用安定法関係

▪️高年齢雇用確保措置の経過措置の修了
・老齢厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢以上の者について、継続雇用制度の対象者を限定する基準を定めることが認められた経過措置が完了

職業安定法関係

▪️紹介手数料に関する情報開示
・職業紹介事業者に求める紹介手数料に関する情報開示事項に、職種ごとの平均手数料率の実績を追加

障害者雇用促進法関係

▪️除外率の引き下げ
・障害者の就業が困難であると認められる業種に対する除外率を一律10ポイント引き下げる

健康保険・厚生年金関係

▪️被保険者データを収録したCD提供の修了
・日本年金機構による被保険者データを収録したCDの提供は令和7年3月末に修了。令和7年4月以降の被保険者データの受け取りは「オンライン事業所年金情報サービス」などの利用を推奨

「オンライン事業所年金情報サービス」については、こちらからご確認ください。
▪️在職老齢年金の支給停止調整額の見直し
・名目賃金の変動によって改定され、令和7年度は前年度の50万円から51万円に引き上げる
【画像は、MLB TOKYO SERIES  ドジャース対カブス開幕戦が開催された東京ドームです。】