物流の2024年問題(1)

 2024年4月に、トラックドライバーの長時間労働の改善に向け、トラックドライバーの時間外労働の上限が年間960時間となります。しかしながら、この基準を超える労働時間の事業者がいまだ約4割との調査もあり、特に長距離運行の事業者の長労働時間は改善が進んでいません。こうした実態には、次のような理由があると言われています。
 ・発(着)荷主で荷待ち時間が発生する。
 ・納品までのリードタイムや時間指定等の条件が厳しい。
 ・積込みや荷卸しが手荷役で、作業時間が長時間となる。
 ・荷主からのオーダーに合わせた効率的な配送計画が作られていない。 などです。

 このように、個々の運送事業者の努力だけでは、労働時間の削減に限界があります。また、現状の物流システムを維持したままで、労働時間を削減したならば、2024年度には輸送能力が約14%不足し、さらに、このまま推移すれば2030年度には約34%不足すると推計されています(第3回 持続可能な物流の実現に向けた検討会資料)。

 こうした中で政府は、6月2日、「我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議」において、「物流革新に向けた政策パッケージ」を取りまとめ、同「政策パッケージ」に基づく施策の一環として、経済産業省・農林水産省・国土交通省は連名で、発荷主事業者・着荷主事業者・物流事業者が早急に取り組むべき事項をまとめた「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」を公表しました。概要は次のとおりです。 

「物流の適正化・生産性向上に向けた
荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」(1)

 効率的な物流を実現するためには、発荷主事業者、物流事業者(運送・倉庫等)、着荷主事業者が連携・協働して、現状の改善を図るための取組を実施することが必要である。発荷主事業者、物流事業者及び着荷主事業者は、次に掲げる諸事項に取り組むことを通じて、物流の適正化・生産性向上を図るものとする。

1. 発荷主事業者・着荷主事業者事業者に共通する取組事項

(1)実施が必要な事項
◾️物流業務の効率化・合理化
①荷待ち時間・荷役作業等にかかる時間の把握
 荷主事業者は、発荷主事業者としての出荷、着荷主事業者としての入荷に係る荷待ち時間及び荷役作業等(荷積み・荷卸し・附帯業務)にかかる時間を把握する。

②荷待ち・荷役作業等時間2時間以内ルール
 荷主事業者は、物流事業者に対し、長時間の荷待ちや、運送契約にない運転等以外の荷役作業等をさせてはならない。
 荷主事業者は、荷待ち、荷役作業等にかかる時間を計2時間以内とする。その上で、荷待ち、荷役作業等について2時間以内を達成した、或いは達成している荷主事業者は、目標時間を1時間以内と設定しつつ、更なる時間短縮に努める。

③物流管理統括者の選定
 物流管理統括者は、物流の適正化・生産性向上に向けた取組の責任者として、販売部門、調達部門等の他部門との交渉・調整を行う。

④物流の改善提案と協力
 発荷主事業者・着荷主事業者の商取引契約において物流に過度な負担をかけているものがないか検討し、改善する。また、取引先や物流事業者から、荷待ち時間や運転者等から、荷待ち時間や運転者等の手作業での荷積み・荷卸しの削減、附帯業務の合理化等について要請があった場合は、真摯に協議に応じるとともに、自らも積極的に提案する。

◾️運送契約の適正化
⑤運送契約の書面化

⑥荷役作業等に係る対価
 荷主事業者は、運転者が行う荷役作業等の料金を支払う者を明確化し、物流事業者に対し、当該荷役作業等に係る適正な料金を対価として支払う。

⑦運賃と料金の別建て契約
 運送契約を締結する場合には、運送の対価である「運賃」と運送以外の役務等の対価である「料金」を別建てで契約することを原則としなければならない。

⑧燃料サーチャージの導入・燃料費等の上昇分の価格への反映

⑨下請取引の適正化
 運送契約の相手方の物流事業者(元請事業者)に対し、下請に出す場合、⑤から⑧までについて対応することを求めるとともに、多重下請構造が適正な運賃・料金の収受を妨げる一因となることから、特段の事情なく多重下請による運送が発生しないよう留意する。

◾️輸送・荷役作業等の安全の確保
⑩異常気象時等の運行の中止・中断等

(2)実施することが推奨される事項
◾️物流業務の効率化・合理化
①予約受付システムの導入

②パレット等の活用

③入出荷業務の効率化に資する機材等の配置
 指定時間に着車したトラックにおいて、フォークリフト作業員の荷待ち等の荷待ち時間が発生しないよう、適正な数のフォークリフトやフォークリフト作業員等、荷役に必要な機材・人員を配置する。また、入出荷業務の効率化を進めるためデジタル化・自動化・機械化に取り組む。

④検品の効率化・検品水準の適正化

⑤物流システムや資機材(パレット等)の標準化
 物流に係るデータ項目の標準化に当たっては、「物流情報標準ガイドライン」を参照し、ガイドラインのメッセージに

⑥輸送方法・輸送場所の変更による輸送距離の短縮
 長距離輸送におけるモーダルシフト、幹線輸送部分と集荷配送部分の分離、集荷先・配送先の集約等を実施する。

⑦共同輸配送の推薦等による積載率の向上
 貨物の輸送単位が小さい場合には、他の荷主事業者との連携や物流事業者への積合せ輸送の実施により、積載率を向上する。

◾️運送契約の適正化
⑧物流事業者との協議

⑨高速道路の利用

⑩運送契約の相手方の選定
 契約する物流事業者を選定する場合には、関係法令の遵守状況を考慮するとともに、働き方改革や輸送の安全性の向上等に取り組む物流事業者を積極的に活用する。

◾️輸送・荷役作業等の安全の確保
・荷役作業時の安全対策
 荷役作業を行う場合には、労働災害の発生を防止するため、安全な作業手順の明示、安全通路の確保、足場の設置等の対策を講じるとともに、事故が発生した場合の損害賠償責任を明確化する。

(続きは、「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」(2)をご覧ください。)

【画像は、日比谷ゴジラスクエアのゴジラ像です。】