「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」の公表

 経済産業省は、3月26日、仕事をしながら家族の介護に従事する、いわゆる「ビジネスケアラー」を取り巻く諸課題への対応として、より幅広い企業が両立支援に取り組むことを促すため、企業経営における仕事と介護の両立支援が必要となる背景・意義や両立支援の進め方などをまとめた企業経営層向けのガイドラインを公表しました。

1. 検討の背景

 超高齢社会の日本において、生産年齢人口の減少が続く中、仕事をしながら介護に従事する、いわゆるビジネスケアラーの数は増加傾向であり、2030年時点では約318万人に上り、経済損失額は約9兆円と試算されています。
 介護者本人への心身負担が発生していることに加え、経済全体で見ても、介護に起因した労働総量や生産性の減少による労働損失の影響は甚大であり、政府として、喫緊の対応が必要となっています。
 従業員一人ひとりが抱える介護の問題は、本人のパフォーマンスの低下や介護離職などに繋がり、結果として、企業活動の継続にも大きなリスクを生じさせます。
 企業が仕事と介護を両立できる環境を整備することは、従業員のキャリアの継続だけではなく、経営面からは人的資本経営の実現や、人材不足に対するリスクマネジメントとして有効です。
2. 「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」の狙い 
 仕事と介護の両立を巡る問題は、高齢化の進展に伴い、まさにこれから本番となり、その解決には全ての企業の協力が必要となります。
 一方で、介護両立支援の充実について企業経営上の優先順位が低いことが要因となり、企業内での取組が進まないという構造的な課題が存在し、その解決のためには経営者のコミットメントが不可欠です。
 本ガイドラインは、企業における仕事と介護の両立支援を先導していくことが期待される経営層を対象にしたものであり、企業が取り組むべき事項をステップとして具体的に示しています。
企業における介護両立支援の全体像
 全企業が取り組むべき事項 STEP1からSTEP3
・STEP1 経営層のコミットメント 
 仕事と介護の両立支援において、全社的に取り組む意向を示す
 ✅ 経営者自身が知る
   「介護」を知り、企業活動への影響の可能性を認識しているか❓
 ✅ 経営者からのメッセージ発信
   仕事と介護の両立施策推進に向けて、ポリシーを発信しているか❓
   
 ✅ 推進体制の整備
   担当役員設置/担当者の指名、管理者層の巻き込みができているか❓
・STEP2 実態の把握と対応 
 組織内での仕事と介護の両立における影響・リスクを把握
 ✅ アンケート・聴取
   社内の介護に関する状況をしっかりと把握できているか❓
 ✅ 人材戦略の具体化
   介護を行う従業員が活躍できるよう人材戦略を設計できているか❓
  
 ✅ 適切な指標の設定
   仕事と介護の両立支援に関して適切な指標を設定できているか❓
・STEP3 情報発信 
 企業がプッシュ型の情報発信を行うことで、従業員個人の将来的なリスクを低減
 ✅ 基礎情報の提供
   介護保険制度などの基礎情報をプッシュ型で提供できているか❓
 ✅ 研修の実施
   全社員向けにリテラシー向上の研修や管理職向けの両立支援推進に関する研修の機会を提供できているか❓   
 ✅ 相談先の明示
   社内での相談先・プロセスを社員向けに明示的に伝えられているか❓
・プラス 企業独自の取組の充実 
   企業実情・リソースに応じて検討・実施
 ✅ 人事労務制度の充実
   法定義務を超えた柔軟な働き方の推進、福利厚生による経済的な支援 等
 ✅ 個別相談の充実
   外部の専門家設置、1on1、人事部・管理職との三者面談 等   
 ✅ コミュニティ形成
   精神的負担を軽減するため、介護経験者同士による対話の場づくり 等
 ✅ 効果検証
   各施策の実施効果について、KPI達成状況等を踏まえた検証

◎外部との対話・接続により、両立支援を促進
・外部への発信と対話による企業価値向上       ↔️  ・地域と連携した両立支援体制
 顧客・投資家・従業員家族・将来の従業員候補等の       自治体や企業等が提供する介護資源へのアクセス
 ステークホルダーへの発信と対話 
 
「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」はこちらからご確認ください。
【画像は、4月から、英国(ロンドン)での4ヶ月公演も予定されている「千と千尋の神隠し」が公演された帝国劇場です。】