n1 blog-9 人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)

◎リスキリングを支援する新設助成金のご紹介

 令和4年度第二次補正予算成立に伴い、人材開発支援助成金に「事業展開等リスキリング支援コース」が創設されました。この助成金は、新たな分野での事業展開や企業内のDX化・GX化に必要となる知識及び技能を習得させるための訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。

◯訓練対象者  ・申請事業主における被保険者
◯基 本 要 件    ・OFF・JTにより実施される訓練であること
        ・訓練時間が10時間以上であること
        ・次の①または②のいずれかに当てはまる訓練であること
         ただし、①の事業展開については、訓練開始日(定額制サービスによる訓練の場合は契約の初日)から起算して、3年以内に実施され
        る予定のもの又は6月以内に実施したものであるものに限る。
        ①事業展開を行うにあたり、新たな分野で必要となる専門的な知識及び技能の習得をさせるための訓練
        ②事業展開は行わないが、事業主において企業内のデジタル・デジタルトランスフォーメーション(DX)化やグリーン・カーボンニュー
         トラル化を進める場合にこれに関連する業務に従事させる上で必要となる専門的な知識及び技能の習得をさせるための訓練

◯支給対象となる事業主は、次の「すべて」の要件を満たす必要があります。
 ①雇用保険適用事業所の事業主であること
 ②労働組合等の意見を聴いて事業内職業能力開発計画(注)およびこれに基づく年間職業能力開発計画を作成し、その計画の内容を労働者に周知していること
 ③職業能力開発推進者を選任していること
 ④従業員に職業訓練等を受けさせる期間中も、当該従業員に対して賃金を適正に支払っていること
 ⑤助成金の支給または不支給の決定に係る審査に必要な書類等を整備、5年間保存している事業主であること
 ⑥助成金の支給または不支給に係る審査に必要であると管轄労働局長が認める書類等を管轄労働局長の求めに応じ提出または提示する、管轄労働局長の実地調査に協力する等、審査に協力する事業主であること
 ⑦事業展開等実施計画を作成する事業主であること
(注)事業内職業能力開発計画は、自社の人材育成の基本的な方針などを記載する計画であり、従業員の職業能力開発について、企業の経営者と従業員が共通の認識を持ち、目標に向かってこれを進めることで効果的な職業能力開発を行うことが可能になり、さらに、従業員の自発的な学習・訓練の取組意欲が高まることも期待して作成されるものです。作成した計画は従業員に周知して、職務に必要な能力や自社の育成方針について共有することが必要です。

◆ なお、助成金を不正受給した事業主や労働保険料を納入していない事業主などは、支給対象となりません。

◯支給対象者となる労働者は、訓練実施計画届時に提出した「訓練別の対象者一覧」に記載のある被保険者であることなど、5つの要件を満たすことが必要です。
◯対象となるOFF・JT
 ①事業内訓練:自社で企画・主催・運営する訓練計画により、要件を満たす社外より招へいする部外講師により行われる訓練等、もしくは要件を満たす自社従業員である部内講師により行われる訓練等、または事業主が自ら運営する認定職業訓練。
 ②事業外訓練:社外の教育訓練機関(公共職業能力開発施設など)に受講料を支払い受講させる訓練等。
◯対象となる経費
 ・事業内訓練:部外講師への謝金・手当、旅費、教科書・教材の購入費など。なお、支給申請までに対象経費の全額を申請事業主が負担していることがわかる書類が必要です。
 ・事業外訓練:入学金・授業料・教科書代等。なお、国や都道府県から補助金を受けている施設が行う訓練の授業料や受講生の旅費等は対象外です。
 ・資格・試験に関する受験料も対象になります。
◆なお、助成対象とならないOFF・JT(接遇・マナー講習、通常の事業活動として遂行を目的とするものなど)、訓練時間数から除れる時間、対象とならない経費も別途定められていますので確認が必要です。
◯対象となる賃金・・・訓練期間中の所定労働時間内の賃金について、賃金助成の対象となります。

◯助成額・助成率・・・経費助成75%(60%) 賃金助成(1人1時間当たり)960円(480円)  *( )内は中小企業以外の助成額・助成率
◯支給限度額
 ①経費助成限度額(1人当たり):1人1年間職業能力開発計画あたりのOFF・JTにかかる経費助成の限度額は実訓練時間数に応じて次表の通りです。

企業規模10時間以上100時間未満100時間以上200時間未満   200時間以上   
中小企業事業主30万円40万円50万円
中小企業以外の事業主20万円25万円30万円
*専門実践教育訓練の指定講座の訓練については、一律「200時間以上」の区分となります。
    *eラーニング及び通信制による訓練等(標準学習時間が定められているものは除く)については一律「10時間以上100時間未満」の区分となります
*定額制サービスによる訓練の場合は、訓練時間数に応じた限度額は設けません。

 ②賃金助成限度額(1人1訓練当たり):1,200時間が限度時間となります。ただし、専門実践教育訓練については、1,600時間が限度時間となります。
 ③支給に関する制限:1事業所が1年度(注)に受給できる助成額は、1億円。
 (注)支給申請日を基準とし、4月1日から翌年3月31日

◎その他:訓練実施計画届や支給申請書の提出などは、期限が定められていますのでご注意ください。

以上が、人材開発支援金(事業展開等リスキリング支援コース)の概要です。
 詳細はこちらをご覧ください。https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001019762.pdf
 
 令和4年度第二次補正予算では、人材開発支援助成金(人への投資促進コース)についても、企業内においてデジタル・DX化やグリーン・カーボンニュートラル化を進めるために実施する教育訓練の経費が助成の対象に追加されるなどの改正がありました。
 皆様ご存知のように、岸田内閣は「新しい資本主義」を掲げ、今年6月に「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」をまとめました。実行計画では、人、科学技術・イノベーション、スタートアップ、GX及びDXの4分野への投資を重点化するとしています。この実行計画の基礎資料集では、教育訓練を受けた従業員の割合の増加は労働生産性や平均賃金の上昇に効果があること、日本企業の人的投資(OFF・JTの研修費用)は米国やフランスなどの先進国に比べて低い水準にあり、かつ低下傾向にあることなど、政策の背景にあるデータが示されています。そして同時に公表された「新しい資本主義実行計画工程表」では、「人への投資」に関して、今後3年間で4,000億円規模の事業を実施するとしていました。さらに、その後に公表された総合経済対策の重点事項では、「人への投資」に関して、今後5年間で1兆円の施策パッケージに抜本強化するとの方針が示されました。こうした方針を踏まえて令和4年度の第二次補正予算が成立し、厚生労働省の令和5年度予算概算要求でも、人材開発支援助成金、リスキリングやGX及びDXを促進するための予算などが概算要求されています。(概算要求案はこちらを参照くださいhttps://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/23syokan/dl/01-01.pdf
 各企業・事業者においても、VUCAの時代、人的資本経営が企業の競争力の源泉と認識され、ステークホルダーからも要請されている今日では、これまで以上に「人への投資」は重要な課題です。自社のビジョンや戦略に必要な人材の要件を明確化して人材の確保や育成の方針と施策を具体化し、人事評価制度の運用や働き方改革などと併せて経営計画に盛り込む必要があります。そのうえで、政府が実施する施策や助成金なども活用して、計画的に人材への投資を進めることが、生産性の向上や競争力を高めることにつながります。

 なお、課題となっているDXのデジタルスキルについて自社の要件を定義する際には、今月21日に経済産業省と独立行政法人情報推進機構(IPA)が公表した「デジタルスキル標準」が参考になると思います。(本日、「お役立ち情報」として掲載しました『デジタルスキル標準』を参照ください。)

【画像は、釧路湿原を走るSL冬の湿原号です。】